続・何苦楚魂(なにくそたましい)

今日は呉中央シニアさん主催の大会がありました。

我らが広島瀬戸内シニアは虹村球場において、広島安芸シニアBさん、関西連盟西部支部所属の岡山西シニアさんとのグループで予選を戦いました。

ここ最近の我がチームは、走・攻・守…
全てにおいて「精彩」を欠き、全てにおいて「覇気」が足りない、まさに「不甲斐ない戦い」が続いている。

前回コラムの「始まりと初まり」にも書いたように、君たちの中に「奢り」と「慢心」さえなければ、正直、君たちはこんなとこでグズグズと燻り、毎回毎回、煮え湯を飲まされるようなチームではないはずだ。

じゃあなぜ君たちは勝てないのか。

その答えを、今日の試合で垣間見たような気がする。
君たちには「なにくそ魂」「なにくそ根性」がないのである。

君たちの中に、昨夜の両国国技館で行われた、ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級金メダリストの、村田諒太選手のノンタイトル戦を観た子はいるだろうか?

本当に強いヤツ。
本当に負けたくないヤツ。
本気で頂点に立ちたいと思ってるヤツは…

彼のように、ぜっ………たいに!! 後ろに退かない!!

一発打たれても、あごを突き出し前に出て。
一発貰ったら、必ず二発三発と、相手の顔面目がけて拳をブチ込み前にゆく。

なにクソ!! なにクソ!! と吠えながら、ただひたすら前に出る。
格好など気にせずに、周りなど気にせずに、殴られた相手の目だけを睨み返し…
腹の底から、雄叫びをあげて、渾身の拳を握り締めて前にゆく。

呉中央シニアさん主催の招待試合大会…
勝っても何の挑戦権も掛かっていない、ただの招待試合大会…
それでも君たちは、恒常的に予選敗退を繰り返してゆく、今の「不甲斐ない戦い」の毎日に「嫌気」がさしていたはずだ。

だから君たちは、何が何でもこの大会の予選を勝ち、翌日の決勝トーナメントに駒を進め「広島瀬戸内ここにあり!!」という「なにくそ精神」を、他チームに見せたかったはずだ。

12月7日(土)、広島瀬戸内VS岡山西の予選第三試合…
この試合に勝った者が、明日の決勝トーナメントに出場することができる。

試合は両チーム、序盤の点の取り合いから落ち着きをみせ、4-2という2点ビハインドで迎えた7回表の最終回。
この回先頭の中村靖太、そしてネクストの榎 粋世、岩本啓吾、岡本 空、そして、主将で主砲の山本に大きな声で檄を飛ばした。

「この回… この試合!! この最終回!! 神宮予選決勝戦の最終回じゃ思うて性根入れて来い!! ワレらのなにくそ根性、みしてみぃ!!」

そしてこの回…

こんなら、ホンマに逆転してくれた。
6回かかって2点しか取れなかったクソったれどもが…
「つなげる!!」「転がす!!」の精神だけで、5点をもぎ取った。

すごい嬉しかった。
この子らの「底力」と「なにくそ魂」を感じた。

そしてその裏…

3点差を守り切れんかった。

久々に子供たちの試合で、悔し涙が出そうになった。

2点ビハインドをひっくり返し、更に3点差をつけた7回裏の最終回…
岡山西の怒濤のごとく繰り出してくるジャブの応酬に…
「負けるか!!こら!!」と、闘志剥き出しで、前へ前へと向かってくる岡山西ナインのプレッシャーに…
お前らはガードを固め、下をうつむき… 足を止め…
そして、後ろへ後ろへと退き… このケンカ勝負から逃げた。

一樹…

お前が背中に背負っている「1番」は、単なる縦の棒なのか?
エースのプライドと、エースの重みをお前は感じ、あのマウンドに上がっているか?
雄叫びを上げ!!咆哮し!! 握り拳を突き上げながら相手打者に向かってゆく…
あの田中将大投手の姿に、お前は心を動かされたことはないか?
カッコイイ…!! と、熱いモノが込み上げてきたことは… お前にないか…?

武蔵…

お前が何十球…何百球と受けている「エースの球」に、お前は何も感じなかったのか?
ミットの奥に痺れる球の異変… 変化球の角度…キレ… 球の勢い…

そして… 一球一球伝わってくる「一樹の不安」と「一樹の弱気」
お前は、その異変に気付きもせず、ただマウンドのエースにボールを返し続けていたのか…?

お前が被る、青いプラスティック格子の向こう側に…
負の匂いと… 浮き足と… 迫り来る「危険」という名の空気を… お前は感じ、そして読めなかったか…?

お前は… 本当に「一樹の女房」なのか…?

女房なら!! 旦那が倒れそうな時、支えてあげなさい。
女房なら!! 旦那の異変や、旦那の全てを誰よりも理解してあげなさい。

そして… お前がこの家(チーム)の扇の要なら…
仲間の異変、仲間の不安、仲間の弱気、仲間の奢り、仲間の慢心にいち早く気付き…
お前がその青い格子を取って「顔」を見せ、仲間たちの元に駆け寄って「間」を取りに行ってあげなさい…

お前がこの家族(チームメイト)の女房役なら!!
彼らを全力で守りなさい。
陰になり…日向になって、エースを、仲間を、全力で守ってあげなさい。
それがこの野球で唯一、仲間たちの顔を見渡せる場所に座ることを許された…
この家(チーム)の司令塔なんだから。

お前が最終回にやってきたことは…「ただのキャッチボール」であって…「リード」じゃない。
座って投げて、座って投げて… 旦那ひとりを「孤独」にしていただけ。
お前が誰よりも旦那のことを解ってるんだったら…
お前しか、旦那のことを理解してあげることが出来ないんだったら…
お前が旦那ひとりを苦しめちゃダメだ。

ニッコリ笑って側に行き…
「大丈夫!! あと2つ!! 自信を持って腕を振って、俺のミット目掛けて投げてこい!!」
そう言って、胸の一つや二つ、軽くこついてやるだけで…アイツはきっと救われていたはずだ。

2時間近くかけて積み上げてきた、19個のアウトカウント…
辛抱に辛抱を重ね、どうにか4失点で食い止めてきたその集大成は、あと2つのアウトカウントで、神がかり的な逆転勝利で終わったと…
あの球場にいた誰もが、そう思っていたはずだ。

だからこそお前たちは「その瞬間」を、早く!!早く!!と欲しがり過ぎた。
誰よりも早く、その瞬間を手に入れようと焦りすぎた。

さっき良い勉強をしたばかりじゃないのか?
お前たちにさっきの攻撃で2点差を逆転され、さらに3点差までつけられた岡山西のナインたちは、お前たちと同じように2時間近く18個のアウトカウントを重ね続け…
たった3つのアウトを欲しがり過ぎたために…
誰よりも早く、その瞬間を手に入れようと焦りすぎたがために…
あの最終回の悲劇を、自ら呼び寄せてしまったんじゃないのか…?

俺たちは野球をやっていない。
球場で声援を送るお母さん方は、「その最終回の怖さ」をグランド上で経験していない。
お前たちだからこそ…
「逆転した後の次の回の怖さ」を知っているんじゃなかったのか…?

お前たちがその俺らと、お母さん方と同じような「勝った♪」という気持ちで守備についてどうする?!
若しくは「逆転されたらどうしよう…」「エラーしたらどうしよう…」「フォアボールを出したらどうしよう…」という、必要以上に自分を追い込んで守備についてどうする?!

2時間近くかけて、19個のアウトを取ってきたんなら…
2時間以上かけて、たった3つのアウトを取ったってイイじゃないか?!
最後の3つのアウトを取らなきゃ… その3つを取ってしまわなければ…
2時間近くかけて取ってきた、18個のアウトが何の意味もなくなってしまうんじゃないのか?!

お前たちは今日の敗戦を「ただの招待試合で」「ただ予選で敗退した」と思わないでいて欲しい。
お前らが待ち続けた「自分たちの代の今年最後の試合が、3つのアウトを取れずにサヨナラで負けた」
と、心の底に深く刻み込み、この2013年を越えて欲しい。

それが今のお前たちに一番必要な「何苦楚魂(なにくそたましい)」なのだから。

長くなったので、最後に一つだけ。
5回の表… 山本主将の打席で、岡山西のエースが投じた渾身のストレートが、山本の左胸鎖骨付近へモロに直撃した。

普段は絶対に、痛いの痒いの言わない山本が、のたうち回りながらその場にしゃがみ込み、腹ばいになって嗚咽しながら苦しんだ。
球場は一瞬凍り付き、両軍ベンチからも「動くな!!大丈夫か!!」と各指揮官たちが飛び出してきた。
山本は腹ばいの状態から、手をプルプルと振るわせながら四つん這いとなり、渾身の力で黒土を握りしめながら
大きな声で「ぅおーーーっ!!」と叫んで立ち上がり、全力で一塁に走った。

そりゃ痛いだろう。 もちろん息も出来なかったはずである。
立つことはもとより、一塁まで全力で走れるなんて、中学生の少年に出来るはずもない痛みだろう。
でもアイツは… 雄叫び一つで立ち上がり、そして一塁まで全力で走った。

この主将の姿を…この主将の根性を…
誰よりも「この試合に勝ちたい」と歯を食いしばり、一塁まで全力で走り抜けた主将の背中を…
来年の卒団まで片時も忘れず、その胸に刻みつけて欲しい。

きれいな野球はもういらない。
カタチだけの野球はもういらない。

泥臭くなれ。 がむしゃらになれ。 そして負けず嫌いになれ。
お前たちの野球に… もうカッコ良さはいらない。

2013年12月7日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 広島瀬戸内シニア広報部長