君たちが見上げるあの空「19期生のステージに終幕」

9月15日(日)、実に1ヶ月の順延を経て、ようやく2013年度の卒団記念大会の準々決勝戦が行われ、広島瀬戸内は力の限り戦い、そして残念ながらこの準々決勝で19期生の軌跡に幕を閉じた。

先週から一週間の快晴の中、この日だけ朝からシトシトと小雨が降り続き、我々大人たちにとっては怒りにも似た感情も芽生えたが、選手たちは実に爽やかで、晴れやかな笑顔で、中学野球生活最後の土の匂いと、仲間たちとの時間を満喫した。

たらればを言えばキリがない。
悪条件を数え上げれば愚痴しか出てこない。

しかし、彼らの口からは、誰一人としてそんな後ろ向きな発言をする者はなく、一様に「感謝の言葉」を述べる子たちばかりだった。

決して「強くなかった」子たち。
そして群を抜く「スーパースター」など、一人もいなかった、この19期生。

しかし、最後の日を迎え、試合終了後は後輩たちに笑顔で握手を求め…
指導者の方々と大笑いしながら談笑し…
そしてこの数年間、共に「広島瀬戸内劇場」を見守り、歩み続けて下さった保護者の方々に、感謝の言葉を添えながら深々と頭を下げて回るこの子たちの姿を見ているだけで、我々大人たちはお腹一杯の気持ちになれた。

これを「満足」と言わずして何と表現できようか。

我々は日々、子供たちからたくさんのコトを学ぶことが多い。
それは、戦い(働くことや育児や家事)に疲れた、多くの大人たちが、唯一の休息の場でもある週末を返上してまで、彼らが戦い続けるグランドへ足を運ぶことからも「それ」を証明することができる。

思えば、僕たちはこの2年半の間、この子たちから何度も何度も一喜一憂させらました(苦笑)
大人たちの一喜一憂とは非常に身勝手なモノで、最初の頃の僕たちは、この子たちの一勝一敗に笑ったり、哀しんだりの毎日でした。
正直…「このチームでは神宮の夢なんて見ることは出来ないのかなぁ…」と諦めかけたこともありました。

そんな僕たちでしたが、それでも彼らに「たった二つのこと」だけは、胸を張って貫くことが出来ました。

その一つ目は、どんなに負け続けようとも、決してその姿から目を逸らさず「彼らを見続けてあげる」こと…
そして二つ目は、どんなに良い結果が現れなくても…この子たちが戦う姿勢を諦めない限り、僕たちは球場に足を運び「彼らを信じて応援し続ける」こと…でした。

文字にしてみれば、凄く我慢しているように感じるかも知れませんが、今思えばそれもすごく楽しかったように思えます。

そんな僕たちの想いとリンクするように、この2年半、彼らは彼らで貫き通した信念がありました。
それは、奇しくも僕たちの思いと同じ「たった二つのこと」しかありませんでした。

彼らが貫き通した二つの信念。
それが「一切、言い訳をしない」ことと「仲間と指導者だけを信じる」ことでした。

僕たちが「自然に貫いた二つの想い」
そして、彼らが「自然に貫いた二つの信念」

その「二つ」がゆっ…くり、ゆっ…くりと交差し始めた辺りからでしょうか…
ようやく、ゆっ…くり、ゆっ…くりと結果が見えてくるようになり、そのことがきっかけで、
「目の前に映っているモノ(目先の1勝など)だけが全てじゃない」という一番大切なモノに気が付けたことを、今でも鮮明に覚えています。

それが「自然」から「必然」に変わっていった証…
彼らとこのチームを心から信じることが出来た「絆の誕生」だったのかも知れません。

彼らが歩んだ2年半という月日の2年間は…
正直、泥水をすする2年間だったように思えます。

しかし、その2年間を誰一人として諦めなかったからこそ…
監督コーチ… そして選手の一人一人が、同じ目標を持ち続けていたからこそ…
最後の半年で、こんなにも幸せな野球生活を送ることができた。

大人たちの誰もが一度は「このチームでは神宮の夢なんて…」と不安に感じたこともあったであろう。
でも選手と監督コーチだけは、そんな不安など一度も感じたコトはなかったという…
その強い自信は、強がりや言い聞かせなどではなく「泥水をすすった2年間」を乗り越えてきたからこそ言える、彼らにしか分からない、強く大きな自信だったように思える。

彼らにとっての「その2年間」は、とてつもない「逆境」と「試練」の日々だったのではないかと思う。
しかし、逆境は跳ね返すためにある言葉であり、試練は乗り越えるためにある言葉でもある。

僕たちはこの2年半で、何度も彼らから「その言葉の意味」を教わってきた。

私事の話をして申し訳ないのだが、卒団大会で敗れたこの日、息子に対して素直な気持ちをこう伝えた。
「この2年半、本っっ当に…楽しかった!! 何もかもが大満足じゃった。この夏、北海道に連れてってくれてありがとの。」
さすがにこの日だけは、自然と感謝の言葉しか出てこなかった。

すると息子は、一言だけこう返してくれた。

「今度は甲子園に連れて行くけぇ」

もし、世の中に…様々な「有終の美」があるならば…
「最後は勝利をもって美とする終わり方」だけが全てじゃないことを…声を大にして申し上げたい。

一つの時代が終わったとき…
一つの物語が終わったとき…
「もぉ~お腹いっぱいだぁ~♪」と、お腹を抱え、見上げた空が眩いほど美しく見えたなら…
それも歴とした「有終の美」なんだろうな…と僕は痛感した。

19期生のみんな。
お前たちが見上げたあの空は綺麗だったか…? 美しいと感じたか?
この空はどこまでも永遠に繋がっている。
そして、お前らと同じ日、同じ時間、同じ気持ちで眺めてる奴らもたくさんいる。

この夏… お前たちが見上げた「この空」を…
何人もの球児たちが、今日のお前たちと同じ気持ちで眺めていたコトだけは…どうか忘れないでいて欲しい。

この空の向こうには、お前らよりもっともっとスゲー奴らがたくさんいる。
そして、お前たちより、もっともっと熱い想いで眺めている奴らもたくさんいる。

そんな奴らに負けるな!! そしていつの日か…
そんなヤツらとあの聖地で戦えることを夢見て… 顔晴れ!!

最後に…

今思えば、この一ヶ月間、不思議なくらいお前たちの卒団を阻み続けた「この空」は…
もしかしたら今日のお前たちが、負けてどんな言い訳をするのか試していたのかも知れねーな…
でもお前たちは誰一人として「言い訳」はしなかった。
そして、最後は感謝の言葉と共に、満面の笑顔で我々に頭を下げに来てくれた。

19期生。
それがお前たちがこの広島瀬戸内という「野球塾」で学んだ「人間学」なんだ。
野球という球技もたくさん学んできただろう…
しかし、お前たちが本当に学んできた全ては、こういった基本的人間力なんだ。

それはこの先、どこの高校に行っても、どの野球部に入っても決して負けることはない!!
そのことだけはどうか忘れず、胸を張って「広島瀬戸内シニア出身の○○です!!」と、大きな声で自己紹介して欲しい。

お前たちの残してくれたものは、きっとこの20期生、そして21期生の心に深く刻まれたと思う。
これからも…お前らが残してくれた、数々の大切なモノを胸に、チームの伝統として引き継いでゆくから。

19期生の選手たち。卒団本当におめでとう!!
そしてこれからも何事においても言い訳をせず、自分を信じ、指導者を信じ、そしてかけがえのない仲間を信じて、最高の野球道を歩んでいって下さい。
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2013年9月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 広島瀬戸内シニア広報部長