【コラム】17,520時間の成果

令和2年10月18日(日)

今日で第27期生の「追い続けた夢」がひとつ消えた。

 

キミたちは今日という日まで、雨の日も風の日も。

凍てつくような寒い冬の日も、目の前がクラクラしそうなほどの暑い夏の日も。

来る日も来る日も「江田島」までやってきて

来る日も来る日も「野球漬け」の毎日を送り続けている。

 

その「キミたちが夢中になっているもの」の正体は、

「自分たちの代」がくるまで、陽のあたる場所には立てず…

毎週4時、5時に起き、小さなカラダにたくさんの荷物を背負わされ…

陽の当たる先輩たちのために一生懸命声を出し、先輩たちの打ったボールを探しに草むらに入り…

先輩たちの試合が終わった後は、先輩たちが荒らしたグランドを整備し…

先輩たちが負けた試合の後は、先輩たちと一緒に体育座りをして長い長い説教を受け…

真夏の炎天下の中、日陰に入ることも許されず…

雨の降りしきる中、びしょ濡れになりながらも、ボールボーイという仕事を一生懸命こなし…

先輩たちのために。チームのために。

ただ、ひたすら…

 

「来たるべき日」

 

がくるのを心待ちにし、毎日毎日、その日が来るのを夢見て…

わずか1年という陽の当たる場所に立つことを夢見て努力するスポーツ…

 

それがキミたちの選んだ「野球」という名の団体競技である。

 

僕は、この生き様って「セミの一生」に似ているな…と、いつも思ってしまう。

セミは、生まれて直ぐに土中に潜り、2年~6年の長い長い歳月をかけて、何度も何度も脱皮を繰り返し、寿命一ヶ月前という「来たるべき日」が訪れたとき、ようやく地上に現れ、そしてあの激しく力強い鳴き声で「最後のナツ」を生きる。

今までのすべてを捧げるかのように…

力強く、そして思う存分、彼らは泣き、そして最後はすべてのチカラを出し切ったかのように、生まれ育った大地へポトリ…と落ちてゆく。

 

儚くも美しい、そんなセミの一生に、僕はなぜか「やり切った感」を感じてしまう。

 

冒頭から脱線してしまったが、果たしてキミたちにとっての「来たるべき日」とは一体いつなんだろう?

キミたちにとっての「地上」って… いったいどこを指すのだろう。

 

人それぞれ答えはあると思うが、僕の答えで言わせてもらえれば、それはやっぱり

「秋季・春季・ジャイアンツカップ・日本選手権」

という、「リトルシニア四大大会」だと思う。

 

キミたちも含め、多くの子どもたちは「この4つの高い山」を制覇することを目標に、毎日毎日…

辛く厳しい練習を積んでいると思う。

 

そして、この4つの山のどこかで「最高の一本」を打つことを夢見て、約2年間、ツラい球拾いをしてきたんじゃないのか?

そhして、その努力と成果が報われるときが…

この「最後の1年」じゃなかったのか?

 

令和2年、10月18日、日曜日、岩国きずなスタジアム。

その、夢にまで見た「来たるべき日」が、ようやく今日、キミたちの目の前に用意された。

思えば、長い長い2年間だった。

 

2年間という月日を、時間になおせば何時間になるんだろう?

1年365日×24時間=8,760時間

8,760時間×2年間=17,520時間。

 

キミたちが「陽の当たる場所」を夢見て過ごした時間は、実に17,520時間。

スゴい数字だよな?

 

しかし、キミたちが過ごしてきた「下積み時代」の「成果」をお披露目することが許される時間は…

今日、キミたちが尾道シニアの選手と戦った「2時間」しか与えてもらえないのである。

 

気の遠くなるようなオモイで重ねてきた「17,520時間」という日々は、たった「2時間」ですべてが決まってしまうのである。

 

今日のキミたちに問いたい。

キミたちが夢にまで見た「今日の2時間」って…どうやったや?

思い描いていた幸せな「2時間」やったか?

何度も何度もヤメそうになり、何度も何度も挫けそうになりながら走り続けた17,520時間。

そのツラかった自分に「ようやった」と、肩を叩いてやれるほどの「成果」を魅せることはできたか?

 

17,520時間の様々な日々をチャラにできるような、最高の2時間を過ごしたか?

自分に納得したか?

もうこれで、長くツラかった2年間を「過去の良い想い出」として、胸にしまっておくことができるか?

 

今日、キミたちが過ごした「2時間」は、まぎれもなく「キミたちが勝ち獲った財産」である。

このステージに立ててたことは、まぎれもなくキミたちが築いた「17,520時間の成果」であることは間違いない。

だから、今日の2時間に、変ないちゃモンや難癖をつけるほど、オレたちも野暮じゃない。

満足しようと、後悔しようと、それは「キミたちが掴んだ財産」なのだから、好きに使えばいい。

 

けど、今日を終えた時点で「ひとつだけ確かなこと」と「3つの不確かなこと」が生まれたことを覚えておいて欲しい。

 

まず「ひとつだけ確かなこと」とは、

今日でキミたちが夢見てきた「来たるべき日」のひとつである「最後の秋」が終わったということ。

今日でキミたちが描いた4つの夢のうち、早くも1つの夢が終わった。

 

そして「3つの不確かなこと」とは、

キミたちが「立てる」と信じている

「最後の春」「最後のジャイアンツカップ」「最後のナツ」

この3つの「来たるべき日」の舞台に立てるかどうかわからなくなったこと。である。

一見すると、そんなの当たり前のことじゃろうが?と思うだろうが、よく考えて欲しい。

 

春はまだイイだろう。

春もリーグ戦なので、一度負けてもまだ最後の舞台に立てるチャンスはもらえるし、東部Aリーグの残留決をめたという利点もある。

 

でも、残りの二つは…

一度負けたらそこで終わりの「一発勝負」である。

 

不吉なことを言わせてもらえれば…

結果的に、今日の敗戦がキミたちにとって「最後の来たるべき日」となってしまうかも知れない。

 

それでもキミたちは!

今日のこの「不完全燃焼の負け」に「後悔はない!」と満足できるであろうか…

いや、満足するであろうか?

 

いやいや!オマエら!

これは脅しじゃないんで?現実としてあり得ることなんで?

 

実際、今日の初戦敗退で、ジャイアンツカップ広島県予選のシード権を逃した。

この時点でキミたちのジャイアンツ予選は、初戦敗退の可能性もあるノンシード枠となった。

せっかく中国大会に出場したのに。である。

この時点で、ジャイアンツ予選の「来たるべき日」には、黄信号が灯ったことになる。

 

そして次に、キミたちが「最後の春」を取れなかった場合…

この時点で4つのうち、2つの夢が消えることになるのはもちろんのこと、もし本戦まで残れたとして、今回みたいに初戦敗退となってしまった場合…

その時は一番の目標である「最後のナツ」もノーシードで挑まなければならず、最後のナツも黄信号が灯る可能性も大いにある。

 

そんな茨の道を歩まないために!

来年の春に躓かないために!

 

キミたちは「ここ(今日の敗戦)」で気付かなければならない!

キミたちが苦労と努力を重ねながら歩んできた「17,520時間」の重さと偉大さに!

 

あと半年しか時間がないということに!

あと3回しかチャンスがないということに!

 

今日の「最後の秋」の結果はご覧のとおりであるが、この試合は勝っても負けても「課題」しか残らない、非常に悔しい敗退となった。

 

せっかく来年の春、全国センバツ野球大会の「夢の舞台」に立てる「資格」を手にしたのに。

17チーム中、9チームの「オモイ」を封じてまで「この舞台」に立ったというのに。

 

「後悔」の残る試合と、後悔の残る負け方をしてしまった。

 

負けることはイイんだよ。

野球は勝つか負けるかの2つに1つしかない「勝負事の世界」なんだから。

 

でも「後悔の残る負け方」だけは絶対にしちゃいけない。

それはキミたちの代わりに涙を呑んだ「9チームの選手」たちに非常に失礼な行為だと思う。

 

今日の試合を見届けて…大きく頷いた。

 

もう一度

「すべて一から出直し」

である。と。

 

何度も言うようだが、キミたちの漢(おとこ)としての岐路は「この冬」である。

 

何のために、今まで、苦しい思いをして「江田島」まで野球をしにきているのか。

何のために、今まで、遊ぶことも勉強することも二の次にして野球を続けてきたのか。

 

その答えは「もうすぐ」わかる。

 

キミたちの中学硬式野球生活も、残すところ「あと半年」しかない。

そして、その成果をぶつけられる舞台は、残すところ「あと3大会」しかない。

 

その半年を。

その3大会を。

 

「後悔」するも良し。

「人生の転機」にするも良し。

キミたちのその選択に私たちはただ「全力で応える」だけ。

 

ただ消化したいのなら、練習は週1日程度で十分だと思う。

 

幸いなことに、球春到来まで、あと4ヶ月もある。

2年間の球拾いの悔しさと、2年間、コツコツコツコツ…歯を食いしばって頑張ってきた下積み時代を信じ…

あとは、お前たちが「漢(おとこ)」になるだけや。

 

オトコっちゅう生きモンはのぅ?

やるときゃやらにゃツマりゃせんので。

 

少年(ガキ)から、大人(オトコ)になれい。

ウチでメシ食って生きてきたんなら、シビれるようなオトコになってみい。

 

たった4つしかない「夢の舞台」が、今日で一個消えたんじゃ。

この重みと、この悔しさに「真剣」に向き合ってみい。

 

負けてヘラヘラするようなチャラ男はウチにはいらん。

 

ピッチャー陣!

今日から自分との戦いじゃ!

弱い自分に打ち勝ち、とにかく走れい!

走って走って!そのフニャフニャの足腰を、もう一回りも二回りも大きゅうせい!

そうすりゃ自然と球威とコントロールは付く!

 

今日の試合終わって気がついたろうが?

ピッチャーは9個の的を打ち抜かにゃ話にならん。っちゅうことを!

なんぼキャッチャーが取れんようなおっそろしい剛速球放っても、ストライクが入らにゃつまりゃあせんじゃろうが!

なんぼ切れっ切れの変化球を10種類持っとっても、ストライクが入らにゃチェンジになるまぁが!

ピッチャーは先ずコントロールよ!

 

コントロール付けるにゃあ、正しいフォームと体幹作りじゃ!

そがなほっそい体幹で何が支えれるんな?

一定のリリースポイントで、一定のフォームで、一定の腕の振りで投げれて初めて「同じ場所」にボールがいくんよ。

オマエら自分のフォーム見たコトあるか?

自分のリリースポイントと、自分の正しい腕の振りを正面から見たコトあるか?

ハッキリいうちゃるわい。

家でシャドウやりようらんじゃろうが?

いつも一定の位置で、タオルが一定の音しようるか?

へんな音がしたり、腕がスッ…と振り抜けれんかたら、それはフォームが悪いんよ!フォームがバラバラなんよ!

日常のキャッチボールからしっかりフォームを意識して投げようるか?

壁の位置、ボールを切る瞬間、ボールの回転、投げた後のフォロースルー

それらを「意識」して、毎回「真剣にキャッチボール」しようるか?

 

エースっちゅうのはのう。

キャッチボールが惚れ惚れするくらい上手いわい。

 

バッター陣!

今日から箸が持てんくらい、手の平がズルズルになるまで、振って振って!

自分がイヤになってみい!

なんでこがいに振れんのか?

なんでこがいに手の平が剥けるんか?

なんでこがいにバット振るんが疲れるんか?

その答えがわかるまで「アタマ」じゃなしに、「カラダ」で気付かせてみい!

限界超えて、フラフラになって、涙がでそうになるくらい訳がわからんウチに

「・・・あ!」

っちゅうて、目からウロコが落ちるくらい気持ちのええ「一振り」がある。

それがオマエの「理想のスイング」なんよ!

 

それはのう?!

振らにゃあわかりゃあせんのじゃ!

ないアタマで一生懸命考えても、一生、辿り着きゃあせんのじゃ!

オマエらそこまでやっちょらせんじゃろうが?!

目的もなしに、100、200振って、「はい振りました」じゃないんか?

その「一振り」に出会えたことがなかろうが?!

その「一振り」に出会えるまで振っちゃあおるまぁが?!

じゃけ夢中になれんのよ。じゃけバッティングが楽しゅうないんよ。

 

「素振り」っちゅうもんはのぅ!回数じゃないんじゃ!

何回振ったか?じゃないんじゃ!

決めた数だけ振りゃあ「わかる」モンじゃないんじゃ!

「わかる」まで振るんじゃ!「わかりたい」けん振るんじゃ!

 

あの「一振り」はのぅ?麻薬なんじゃ。

あれを一回経験したら、どんなヤツでも絶対「あれ」を求め出す。

それくらい気持ちがエエんじゃ。

それが、自分らでできる、家でもできる「素振り」なんじゃ!

 

分かりもせんくせに振るのをヤメなや!

納得しもせんくせにバット置くなや!

回数振るためだけの「素振り」なんか、今すぐヤメい!時間の無駄じゃ!

「一振り」はのう! 「音」が違うんじゃ。

26期生の升本優輝の音、聞いてみい!

あれが「気がつくまで振ったヤツ」のホンモノの振りじゃ!

ホンモノの音じゃ!

 

ワレらの「手本」が、まだこのチームにはようけおるんじゃないんか?

思い出せや!

先輩のエエとこと悪いトコを!

そして、盗めるとこは全部盗まんかい!タダじゃ!

 

今年はまだ終わっちょりゃあせんど!

山口東大会と呉中央大会のふたつで「結果」じゃなしに、ワレらの「納得」と「意地」をみせんかい!

 

ええか?おまえら。

高校で花咲かせるためにも!

ここ(中学)で野球やめる気でおるヤツも!

 

この半年で人生初めての「本気」になってみい。

 

オマエらに残された時間は、あと半年「しか」じゃない。

オマエらの残されたチャンスは、あと3回「しか」じゃない。

 

「も」じゃ!

 

オマエらが費やした「17,520時間」をたった「2時間」で終わらしてどうすんじゃ!

あのツラくて長かった日々を、たった2時間で取り戻せるんか?!

たった2時間で満足すんか?!

10時間も20時間もやれい!

10時間も20時間もオマエらと一緒に野球がしたいんじゃ!

オマエらの苦労と努力を「笑顔」に塗り替えてみい!

 

ワシもオマエらとの時間を「たった2時間」で終わりとうないんじゃ!

1時間でも長う、オマエらの野球が見たいんじゃ!

もっともっと!一緒に笑おう!

 

大丈夫じゃ!オマエらには

「あと半年も時間がある」

「あと3回も夢が狙える」

17,520時間努力してきたんじゃ!

一試合でもようけ、試合しようで。

 

2020年10月18日 | カテゴリー :