2023年8月26日、土曜日…
2023年9月3日、日曜日…
広島瀬戸内シニアの長い歴史の中で、これほどまでに意味深い一週間を僕は経験したことがない。
2023年8月26日、ぶんちゃんしまなみ球場。
どこまでも澄み渡る、深い青空の下…
第29期生の3年生たちは「完全燃焼」で幕を閉じた。
11年ぶりに卒団大会最終日まで駒を進めた第29期生の子どもたちの目には、全員大粒の涙が光っていた。
第29期生の最後の試合は、残念ながら惜敗となり、金色のメダルを手にすることはできなかったが、最後は清々しい笑顔で中学野球の幕を閉じた。
最後の大会で深紅の優勝旗を手にすることができなかったこと。
優勝して、お世話になった全ての人に、勝利で恩返しできなかったことは、正直いえば悔しい。
でも、卒団大会は「優勝すること」が目的じゃない。
この卒団大会は「一試合でも多く」「一秒でも長く」この仲間たちと同じユニフォームを着て、試合が出来ることが一番の目的であり、我々にとって一番の幸せなのかも知れない。
その延長線上で「優勝」という最後の栄誉がもらえれば、それはそれで幸せなこと。
そう考えれば、この子たちが「一番最後」まで野球をする姿を見せてくれたことは、我々にとって最高のプレゼントだったのかも知れない。
試合が終わり、9名全員が号泣する姿を見て、僕はやっぱり、2年半という短い期間の中で、この子たちひとりひとりの努力。 笑顔。 そして彼らとの想い出ひとつひとつが、たまらなく愛おしかった。
卒団まで、この9名で試合ができた。 最後までこのメンバーで「笑顔で野球をさせてもらえた」ことに、ただただ感謝しかない。
そんなドラマティックなシーンの余韻に浸るまでもなく、始まりは待った!をかけずにやってくる。
2023年9月3日、豊平どんぐりスタジアム。
これもまた、8月26日に負けないくらい、どこまでも澄み渡る、深い青空の下…
7日前まで29期生の背中を追い続けてきた、第30期生の初陣が訪れた。
3年生が抜けたこの大会。
全選手が真新しい背番号を背負い、新エースの井上が、いきなり完封ゲームを演出するなど、幸先良い船出となった。
この大会は、劇的なサヨナラもあり、完封もあり、と味のある戦いとなったが、決勝戦はあと一歩で初陣優勝デビューという華々しいシーンで、まさかの逆転負けを喫し、準優勝に喜ぶ選手より、悔しさのあまり、呆然と立ちすくむ者…
悔しさのあまり、強く唇を噛みしめる選手がほとんどの悔しい幕切れとなった。
でも、僕は「これで良い」と思う。
いや… 「これが良い」と、何度も何度も大きく頷いた。
先日の第29期生は、完全燃焼の「笑顔の準優勝」で幕を閉じた。
そして、今日の第30期生は「唇噛みしめる準優勝」で幕を開けた。
この「終わり」と「始まり」が、共に「準優勝」というのが、実にドラマティックである。
3年生は、あと一歩のところで、てっぺんに手が届かなかったけれど、その最後の大会で「てっぺん」を獲れなかった無念と悔しさは、キミたちの本当のステージである「高校野球」という次の舞台で思う存分晴らし、あの日掴み損ねた「忘れ物」を、今度こそ獲りに行って欲しい。
そして、キミたち1、2年生は、先輩たちが最後の最後で獲れなかった「てっぺん」と…
キミたちが待ちに待った、最初の大会で、あと一歩!というシーンで「てっぺん」を獲れなかった悔しさを胸に…
今日から残りの大会、全部獲るつもりで!
そして何より、今日いたいな「後悔の残る忘れ物」をしないよう、この悔しさを心の底に刻んで欲しい。
どちらにせよ、2023年の野球の神さまは、新旧のキミたちに、大きな贈り物を与えてくれた。
それがこの「2つの準優勝」という銀色の賞位である。
この贈り物を生かすも殺すも、これからのキミたち次第。
少なくとも第30期生の選手だけは、2023年8月26日のしまなみ球場と、2023年9月3日のどんぐりスタジアムという、2つの表彰式のシーンだけは…
「絶対に忘れない」でいて欲しい。
そして、来年の8月…
アツく、眩しい灼熱の神宮の空の下…
「あの日」があったから…
「あの2つの準優勝」があったから、今の僕たちがある…
と胸を張れるような1年にしよう!
僕はその「姿」を夢見て、キミたちの「底力」を100%、信じているから。
第29期生の教え子たち。
2年半の短い間だったけど、本当に本当にお疲れさま。
そして、たくさんの想い出と感動をありがとう。
このユニフォームを着て、このメンバーで野球をすることは二度とないけれど、この子たちにはいつまで経っても「このメンバーで野球を出来たこと」を誇りに…
そして、この「運命的な出逢い」に幸せに感じながら、これからの長い人生を歩んでいって欲しい。
そしていつの日か、キミたちが育った、この「瀬戸内の小さな島」に元気な姿で帰ってきて欲しい。
第29期生の保護者の方々。
今まで2年半の長きに亘り、第29期生の応援、本当にありがとうございました。
2023年8月26日の子どもたちの笑顔は…
あなたたちが最後まで、この子たちを心の底から愛し、そして信じ続けてきた「最後のご褒美」だったのかも知れません。
これからも、たくさん衝突し、たくさんケンカし、たくさんたくさん…ぶつかり合いながら歩んで行かれると思います。
それでも、最後はこの子たちを、最後まで信じ、これまで以上にこの子たちを愛してあげて下さい。
どんなに時が経っても… この子たちは、死ぬまであなたたちの「可愛い子ども」なのですから…
そして、いつまでもシャークスという家族を忘れず、引き続き、高校野球へとステージを変える、この子たちと、後に続くシャークスの子どもたちにアツい応援とご指導をよろしくお願いいたします!
ありがとう29期生…
そして、保護者の皆さま方…
キミたちと過ごした「長くて短かった2年半」をボクたちは決して忘れない…