【コラム】エースと呼ばれし者

2024年9月23日(月祝)

 

本日、まだまだ「カタチ」も「船長」も「色」も決められないまま「取り敢えず発進」した、第31号丸が、あと少しで座礁寸前の嵐の大航海を終え、なんとか「本選出場」という港に辿り着いた。

 

例年、この時期の出航は、何やかんや言いながら、ほぼ「満を持して」出向することが多い。

しかしながら、この31号丸は、あの強気な発言でどこまでもグイグイ行く、伊藤の口から、初陣の第一声で、迷うことなく「お前らは弱い!」と言い放たれた。

 

誰よりも子ども想いで、誰よりも家族(選手と親)を大切にし、そして誰よりも、子どもたちに自信を持たせる言葉しか口にしない闘将が、初陣で堂々と「お前らは弱い」と言い放ったのは、瀬戸内史上、初めての激であった。

 

悲しいかな、最近あまり「現場」に顔を出せていない私にとって、かなり衝撃的なシーンであったが、その言葉の意味が、この「秋季リーグ戦」という海原でようやく理解できた。

 

第31号丸を一言でいうと「出たとこ勝負」なのである。

 

要はやってみなとわからない、計算できないチームなのである。

良いときは、他の並みいる強豪と互角に渡り合えるほどの底力を持っている。

しかし、悪いときは、その辺の一年生チームにすら、コールドでやられてしまうのではないかと不安になるくらいボロボロに弱い。

 

これはまるで、今のカープと同じくらい「もろい」

 

その最たる例が、このリーグ戦の第一節と第二節で浮き彫りになった。

 

第一節は「やるじゃないか!」と血が騒いだ。

第二節は「まるで別人」のような体たらくぶりに、現実として受け入れられない散々な試合だった。

 

そして迎えた本日の第三節。

負ければ終わりの第一試合。

 

そこでまた「別人」のような輝きを魅せたのだ。

誰もがよしっ!と握りこぶしで勝利に酔いしれる。

そして、この勢いで迎えた第二試合。

 

そこにいいた誰もが「これがあの30分前と同じチームなのか?」と目を疑うような失速ぶりだった。

 

うん。これは…

闘将が「弱い!」と檄を飛ばす理由が分かったような気がした。

 

勝負事だから、多少のムラは仕方ない。

しかし、ここまで大きなムラがあっては、絶対にシーズンを白星先行では飾れない。

 

その「ムラ」の大きな原因。

それは、このチームに、絶対的な「船長」と「エース」がいないこと。

 

僕は、そう感じた。

 

現在、エースと呼ばれしものが背負う番号を、中向 大翔という少年がつけている。

そして、その番号はときに重く、ときに軽く、ふ~わり…ふわりと、彼の背中で舞っている。

 

しかし「エース」と呼ばれ、エースナンバーを背負う者の条件はただひとつである。

「信頼」しかない。

 

投げてみなければわからない。

調子が良ければナイスピッチング。調子が悪ければゴメンなさいでは「エース」とは呼べない。

ただの「背番号1をつけたピッチャー」である。

 

そんな簡単なポジション、誰にでもなれる。

 

エースという名の称号

それは、誰もがなれないから「エース」と呼ばれ、慕われ、信頼される。

 

30期生の耀琉がそうだったように、耀琉で負けたら仕方がない。耀琉のために俺たちが守り、そして打つ!

そう思われるのが、エースの資格であり、存在であり…

そして、それがエースの孤独でもある。

 

今の大翔が、まだエースと呼べない原因は2つある。

それは、大翔自身に、俺がエースだ!と声を大にして言い放つ、「自信」と「自覚」がないからである。

 

そしてもう一つは、大翔を脅かす存在の選手がいないことである。

 

自信は、辛い練習の乗り越え、弱い自分に打ち勝つことで、少しずつ自分の内面から芽生えてくる。

対して、自覚は数多くの修羅場を経験し、そのピンチを克服すればするほど自分の中で芽生えてゆく手応えである。

これらは「自分」の努力と気持ち次第で、どうにでもできる。

 

しかし、脅かす存在だけは、自分の力だけではどうすることもできない。

 

結局、この31期丸が、いまいちパッとせず、しっかりした「色」が決まらない原因は「危機感」という自分を脅かす存在がいないことである。

人間、危機感ほど怖いものはない。

そsh尻に火がついた人間ほど恐ろしいものはない。

 

君たちが今、当たり前に守るポジション、打席、そして背番号は、あと1年後には「与えられたもの」から「奪うもの」に変わる。

 

その法則にいち早く気付き、一秒でも早く、目の色を変えられるヤツが、高校野球のベンチに座ることを許される。

気付けないいヤツ… いつまでも明日があるとのんびり構えているやつはきっと、同級生や後輩の活躍をメガホン片手にスタンドで応援しているだろう…

それが悪いというわけではない。そこを目指しているのなら、その位置目指して一生懸命頑張ればいい。

 

しかし、少なくとも俺は、中学時代から、その位置目指して頑張るお前たちを応援する気にはなれない…

 

いいか? 31期生。

このリトルシニアで、お前らに与えられたステージは、お前らが想像しているより、ズッと短くて早い。

お前らが目指す旗は、3本しかない。

 

今回は、そのうち1本の旗を奪える権利をもらえたに過ぎない。

その権利をこの手に掴むか。

それとも「何もせずに」簡単にスルーするか…

それとも、夢叶わず奪えなかったせよ、この本選で「なにか」を残し「なにか」が芽生えるのか。

 

それは「この数週間のお前」にしかできないし、わからない。

 

ワシからも言う。

 

確かにお前らは弱い!

 

ただ、それだけ「強くなれる」という夢しかない。

そして、どのチームより可能性という「伸びしろ」しかない。

 

どや? こんなに楽しくて、ワクワクすることはないだろ?

 

碧星!優空!啓次!

このチームで、神宮に行きたいなら

お前らが大翔を脅かす「脅威」となれ!

そして何が何でもエースナンバーを奪え!

 

大翔!

このチームで神宮行きたいなら

誰もお前には勝てん、絶対的なエースになれ!

誰もが口を揃えて「うちのエースは大翔!」と呼ばれるような漢になれ!

そして、誰からも信頼されるような…

「絶対的なエース」になれ!

 

壱樹!

このチームで神宮に行きたいなら

この船の舵を取る、絶対的な船長になれ!

このメンバーが道に迷い、どこに向かって歩いていいのかわからなくなったとき…

誰もが一斉にお前を見るような、絶対的な指標となれ!

 

そして最後に! 康惺!

お前はその程度か! その位置で声を出すためにウチに来たんか!

お前を大きく生んでくれた、その身体は「そこ」で使うんか!

もし、このチームで神宮に行きたいなら

この一年でバットを振れい! 振って振って、グリップが血で滑るくらい振って!

漢になれい! まだ中学生じゃ! 諦めるな! ちいそう纏まるな!

 

自分で自分の限界を決めるな!

 

第31期生!

わしゃ、お前らの「目の色」を信じとるぞ。

 

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