2年前の7月10日… 瀬野川球場で「力の差」を感じたルーキーカップの決勝…
その雪辱を果たすべく昨年10月9日… またもや同じ相手に「悔し涙」を流した秋…
一冬越え、選手ひとりひとりの胸に、何が残り、何が芽生え…
そして、どう成長したかが証明される、30期生の春の陣が始まった。
結果はノーガードの殴り合い。
両者、「次」など全く考える余地などない、まさに意地と意地がぶつかり合う、瀬戸内らしいノーガードの殴り合いのすえ、最後は東広島に軍配が上がった。
結果は追いつきながらの再度、勝ち越しを許す「1点差負け」
実は何の因果か、東広島戦は、このパターンによる敗戦は、過去4度もある。
野球のみならず、勝敗ごとには、ある「鉄則」がある。
それは「追いつくだけでは絶対に勝てない」という当たり前の法則である。
1点でもいい。2点でもいい。とにかく勝ち越さないと絶対に流れはこっちに来ない。
1点差であろうと、10点差であろうと、追いついた時点で完全に「勢い」は追いついた側にある。
しかし、ここで逆転できなければ、それはただの「残塁」である。
攻撃側にとって「残塁」ほど痛いものはない。
逆に、守備側にとって「残塁」は凌いだことになり、やがてそれは「流れ」に変わる。
チャンスの後にピンチあり。ピンチの後にチャンスあり。
僕はこの言葉のキーは「残塁」にあると思っている。
遠く離れた呉虹村で、僕は自分の仕事も忘れ、まるで中高生のように毎分、スマホの速報ばかり見ていた。
これを幽体離脱とでもいうのだろうか…
ウソ大袈裟じゃなく、僕の目にはクッキリ鮮明に、カーター記念球場の空気…熱気…そして、この子たちの勇姿がハッキリ僕の目に映っていました。
そして、試合終了後の「涙」も… ちゃんと僕には見ていましたよ。
この試合は泣いていい。
いや、逆に泣かないほうが漢じゃない。悔しいときは思う存分泣け。
負けて納得するヤツはいないと思うが、僕はこの敗戦に「つっかえ」はなくなった。
これまでのシャークスの試合は、どこか「先」を見ていたような気がする。
それが僕にとって、言いようのない「喉に刺さる骨」だった。
しかし、この大会(試合)は違った。
うまく例えることはできないが、トンネルを抜けた後に霧がはれ… どこまでも広がる晴天のような…
そんな「覚悟」をみたような清々しさだった。
まだ準々決勝だろうが、ダブルだろうが、そんなの一切関係ない。
次にどこがこようと、決勝がいつで、どのチームが来ようと関係ない。
今はただ「目の前の敵」だけに集中し「目の前の敵」だけ全力で倒しにいく。
その覚悟、その清々しさが、心の底から気持ち良かった。
僕は立場上、年間100試合以上の試合を見させてもらっている。
その上で、「強い」と言われるチームには、ある共通点があることを教わった。
それは「意図」である。
いわゆる「強い」と言われるチームには、必ず「意図」があり、そしてその「意図」はそこにいる誰にも伝わる。
「このチームは何がしたい」のか
「このチームは何を重視(大切)にしている」のか
そして、このチームは…
「なに」を教わり、「どんな」練習をしてきたのか。
強いと呼ばれるチームは、試合を見ているだけで、それらの「意図」が球場一体に伝わり、無意識に「強い…」と言う言葉が漏れてしまうのである。
それを世間一般では「チームカラー」とも呼んでいる。
「余計な事は考えず、先ずは目の前の敵と全力で戦おう」
この大会(試合)には、そんな「意図」があった。
そして、それはちゃんと伝わってきた。
遠く離れた、呉虹村にいても… それはちゃんと伝わってきた。
そのうえで「負けた」んじゃろうが?
オマエらの実力がないけん東広島に負けたんじゃない!
気持ちで負けたんじゃ。
オマエらには負けん! 絶対こんなら(瀬戸内のモン)には負けん!
なにがなんでも全国に行ったる!
その気持ちがオマエらより僅かに大きかったけん、オマエらが1点差で負けたんじゃ。
ほんなら今日は、相手の強さを素直に認め、オマエらの弱さも素直に受け入れんかい!
気持ちの切り替えっちゅうのはの?
いかに早く、いかに素直に「目の前の現実」を受け入れられるか。や。
成長できんヤツほど「目の前の現実」と向き合うことを恐れ、「自分の弱さ」を認めることができん。
今日の相手は強かった。
今日のワシらは弱かった。
ただそれだけじゃ。
それ以外は、全部、ただの言い訳じゃ。
人間っちゅう生きモンはの?
受け入れるだけ受け入れ、認めるだけ認めりゃ「素直」になれる。
素直になった瞬間… どがな悪いことじゃろうと、みな「過去」になるんじゃ。
過去にせぇ。
辛いことや、乗り越えたいことは一秒でも早よう過去にせぇ。
過去せにゃあ、人間、前を向いて歩いて行けまぁが…
過去にすりゃあ、あとは前に向いて歩いてゆくだけよ!
前だけ向きゃ、ようけ道はあるかいや。
1本しかなかろうが?
神宮に向かって、その道、真っ直ぐ歩くだけでえんじゃないんか?
この春がオマエらに教えてくれたもの…
それは、
今のオマエらじゃ無理。今のオマエらじゃ絶対に神宮には行けん。
と「回答」をくれたこと。
それが解っただけで十分。
本番一ヶ月前に、それを教えてもろうただけで十分じゃないか。
春の神さまに感謝せえ。
オマエらが「現実」を知ったのが、2024年4月7日。
オマエらが「覚悟」を決めたのが、2024年4月7日。
そして
オマエらの「最後の舞台」となるのが、2024年5月11日。
あと1ヶ月で技術が上がることなんか絶対にありゃーせん。
今からなんぼ頑張っても、あと一ヶ月で140キロの球は投げれん。120mのホームランは打てん。
出来もせんことに、必死になってやったフリをするな。
5月11日に後悔するだけじゃ。
この2年間、伊藤大生に「なに」を教わり、毎週毎週「どんな」練習をし…
そして、この仲間と一緒に「どこ」に行きたかったのかを本気で思い出せ!
オマエらの2年半という貴重な貴重な中学校生活は…
全てこの「シャークス」に捧げてきたんじゃないんか!
遊びたいのも我慢し!シャークスと共に生き!シャークスの仲間と神宮目指して過ごしてきたんじゃろうが!
その全ての努力があと一ヶ月で決まる!
あと一ヶ月じゃ!
あと一ヶ月で、どのチームより気持ちで絶対負けるな!
自分たちが行きたい(目指す)場所に行くためには、自分がすべきことはなにか。
この回、1点を取るために、絶対にすべきことはなにか。
この回、0点に抑えるために、絶対にしてはいけないことはなにか。
この悪い流れで、自分がすべきことはなにか。
この悪い流れで、絶対してはいけないことはないか。
野球は全て想定問題。
やるべきことをしたチームが勝ち、やったらいけんことをしたチームが負ける。
その全ては「想定(予測して準備)」していた者だけができる。
出たとこ勝負、その場凌ぎだけでは絶対に降りてこん!
大丈夫!
実力だけなら、十分オマエらも神宮に行ける。
中国連盟20チーム、年間100試合近く見てきたワシが言うんじゃ。間違いない。自信持て。
今日から一ヶ月! 神宮に行きたい!と言う気持ちだけは、絶対どのチームにも負けるな!
100回素振りするときは、100回大きな声で「神宮!」と叫んで振れ!
100球投げるときは、100球大きな声で「神宮!」と叫んで投げれ!
気持ちだけは絶対負けるな!
そしてこれまで、何度も何度も失敗してきた(してはいけない)ことだけは繰り返さず「絶対にこのチームで神宮に行く!」という強い気持ちがあれば、絶対にオマエらは負けることはない。
だって、この日のために、今まで一生懸命やってきたんだから…
大丈夫。オマエらなら神宮に行ける。
このナツ…
お前たちの人生で、一生忘れられない、最高のナツにしような。