「秋の悔しさを必ず果たすために…」
2016年1月…この言葉だけを胸に秘め…
今シーズン、全ての公式戦を初戦で敗退し、どん底からのスタートとなった苦悩の22期生が、長く厳しい冬を乗り越え、念願の公式戦大会初Vを飾った!!
今シーズンの公式戦初Vは、平成28年2月21日(日)~3月21日(月祝)の一ヶ月間にかけて行われた「2016年度オーアンド・オー杯争奪第45回関西連盟中国支部春季大会」を制した。
この大会を最高のカタチで終え、再度この子たちに教わったことがあった。
それはやっぱり「最後まで諦めない心」である。
そしてこの心は「学生野球の専売特許」でもある。
「負けたら終わり。」という、一発勝負の公式戦トーナメントは、時に非情であり…時に人を大きく成長させる舞台でもある。
前回のコラムでも触れたが、今回、この子たちが一番学んだことは「もっともっと野球がしたい」という飢えのキモチを知ったことだと思う。
それは「たった1敗」の敗戦が、こんなにも長く野球(試合)ができないのか… という「後悔」と「もどかしさ」を身を持って体験したからだと感じた。
この子たちの冬は、文字どおり厳しく…辛い厳冬だったのかも知れない。
しかし、この「たった1敗」の意味を噛みしめることにより、「たった1球」であったり、「たった一振り」の大切さも同時に学ばせて頂いた。
今大会の決勝戦。
耐えて…凌いでがっぷり四つで迎えた6回裏…
遂にその均衡が破れた。
高川学園のエース、三嶋くんという高く大きな壁に、残り三つのアウトで2点を返さなければならない…
あの日、あの時、あの瞬間。
あの球場にいた多くの人たちは、広島瀬戸内には「もう」三つのアウト「しか」残されていないのか…と感じたはずだ。
そして、誰もが高川学園の勝利を確信した。
しかし、「たった1敗の辛さ」を知ったこの子たちは、きっとこう思ったに違いない。
僕たちには「まだ」三つ「も」アウトが残されている。と。
その証拠があの6回裏の攻守交代時…
どの選手も大きな声を出しながら、全力疾走でベンチに戻ってきた。
ベンチで迎える控え選手たちも、大きな声で一人一人の選手を迎えた。
そしてあの7回表、この試合で一番の大きな声が三塁側ベンチと球場を包み込んだ。
どの選手も「負けた」なんて思っちゃいない。
どの選手もベンチに座る子なんていない。
ツーアウトになり、万事休すか…と諦めかけてなお、三塁側ベンチの声はもう一段シフトが上がる。
そして乾いた金属音と共に、白球が左中間を真っ二つに破る…
普段、クスリともせず、どんあコトがあっても全く感情を表に出さない西森が、雄叫びを上げながらガッツポーズで一塁を駆け抜けてゆく…
これを「夢のよう」と呼ばずしてなんと表現できようか…
毎年毎年… ブラウン管越しに見る夏の甲子園野球は…
必ずといっていいほど「9回に奇跡のドラマ」が上映される。
それはまるで、有能な脚本家が演出しているみたいに…
僕はあのシーンを、半分「ウソだろ(笑)出来過ぎやろ」と笑ってみていたような気がする。
いや、正確に言えば野球という「スポーツ中継」として観戦していない。
なにかこう…ドラマのような…映画のワンシーンを見ているような…
「現実の出来事」として、いまいち捉えきれていないような…そんな感じでいつも眺めていた。
そしてこの春。
この子たちが「それ」を「現実」として見せてくれた。
脚本家なんていねーよ? ドラマでも映画でもねーよ?
俺たちがやってるのは「野球」という人生勉強なんだよ。と。
僕は… また一つ、自分が恥ずかしくなった。
結局… 「自分の限界」や「結果」って… 自分が勝手に決めつけて… 自分が勝手に諦めてるだけなんだよなぁ…って。
今の俺は… この子たちに勝てるのかなぁ…って。
僕たちって、子どもたちを教えながらにして、実はこの子たちから教わることの方が多い。
その一つ一つはいつもどこかシンプルで… そして人として一番大切で…基本的なことばかり。
そしてこの大会も、この子たちからたくさんのコトを学び…そして大切なことをたくさん思い出させてもらった。
その一つ一つに… 心の底から感謝したい。
この勢いを持って、君たちが目指してきた2年間の集大成大会も制覇し、あの人工芝の球場を踏みしめて欲しい。
取り敢えずは春季大会、優勝おめでとう!!
自分を信じ、仲間を信じ、決して「奢る」ことなく!!
最後の最後まで全力を尽くして突き進んでくれよ!!